今回は、膝のサポーターを選ぶコツについてご紹介したいと思います。

膝が痛いという方によく「膝のサポーターって、した方が良いですか?」とか、「膝のサポーターってどんなのがオススメですか?」と質問されます。

おそらくサポーターをすると「筋力が落ちるからしない方が良い」という意見があったり、たくさんの種類があるから「どれが自分にあうのか分からない」という考えがあるのだと思います。

私の経験ですが、「筋力が上手く発揮できるように」サポーターをして歩くと、不安定と感じていた歩行が安定し、外しても自信がつくようになるということは珍しくありません。

時々、私が開発に関わらせていただいたサポーターを使ってみてとお客さんに渡したりします。

そうすると「外しても長く歩けるし、安定するようになりました」と喜んでサポーターを返却してもらうことがあります。

もちろん、年齢や変形の度合いにもよりますので、長く歩く時はいつも付けているという方もいます。

ただこの場合、歩く時の筋肉をサポートし、かつ「動くのが楽」になるのであれば、膝周りの筋肉は自然と賦活されますので
筋力が落ちるということはあまり考えにくいと思っています。

以上を踏まえると、サポーターをすることで「動くのが楽」と実感できれば、その環境でケアや運動を行い、痛みの改善そして予防を図るための健康づくりを行うことが重要と私は考えています。

では、どんなサポーターが自分に合うのでしょうか。

理学療法士の視点で解説したいと思います。

まず、変形性膝関節症診療ガイドラインによると、そもそもサポーターなどの装具の推奨度はそれほど高くはありません。

しかしお薬と違って体への副作用がないこと、負担を減らしてくれる可能性が高いことから、使用している方は非常に多く、たくさんのサポーターが市販されています。

このサポーターには大きく3つのタイプに分けられますので、まずはそれぞれのタイプの特徴について理解しましょう。

タイプ1:がっちり固定タイプ
まず、1つめは「がっちりと固定するタイプ」です。

これは硬性装具と言われ、変形を矯正したり、損傷した靭帯をサポートする場合に使用されます。

おそらく皆さんが目にすることは少ないですが、病院では処方される場合が多いです。

イメージしやすいように言うと、変形が強い人が使用すると思って下さい。

膝の変形度合いを表す「KL分類」というものがあります。

KL分類は変形をグレード0〜Ⅳに分類し、グレードⅣの場合で硬性装具が処方されやすいと報告されています。

がっちり固定タイプのメリットは
・O脚などの変形を矯正する
・膝を制動する靭帯のサポートをする
といったことが挙げられます

一方、デメリットは
・目立つ
・高価である
・取り付けや取り外しが面倒なので継続率が低い
といったことが挙げられます。

いずれにおいても医師に装具を処方してもらう必要がありますし、変形が強くかつ痛みもかなり強い場合に限られますので、こういったものがあるとだけ知っておくと良いと思います。

タイプ2・3:巻くと履くタイプ
2つ目のタイプは巻くタイプで、3つ目のタイプは履くタイプです。

これらのタイプは軟性装具といって、軽くて柔らかく、装着も簡単なことから愛用されている人が多く、薬局などでも手軽に購入できます。

医学的視点で論文等を調べてみると、変形などを矯正する機能はあまりなく、装着による安心感や膝周りの筋を圧迫することで膝の機能を高めていると報告されていますが、明確な見解は得られておりません。
 
この記事をご覧になっている方の多くが、巻くタイプか履くタイプかのどちらかをまずは購入しようと考えていると思いますので、それぞれの特徴について解説します。

タイプ2:巻くタイプ
巻くタイプのサポーターは、次に紹介する履くタイプのサポーターよりも「より強く圧迫できる」という特徴があります。

いくつか論文を調べてみたのですが、巻くタイプのサポーターは臨床症状を改善するのみならず、重心動揺が軽減したという報告や転倒予防に有効であるとの報告もありました。

また、水腫という「水がたまる状態」にも効果があると報告されています。

私も、水が溜まっている方にはよく圧迫するように指導していますが、巻くタイプのサポーターはそれが容易にできるのでオススメです。

もし、水が溜まった場合は、サポーターをして寝てみて下さい。

早く改善すると思います。

ただし、寝れないほど強く圧迫するのは避けて下さい。
 
ということでメリットは、圧迫が調整可能で、強めに圧迫すると楽という方にはオススメです。

一方、膜タイプのデメリットは履くタイプよりも分厚いので、しゃがみ込みなど膝を深く曲げることが多い人にとっては深いに感じやすく、かつ可動範囲を制限する特徴が挙げられます。

タイプ3:履くタイプ
巻くタイプよりも薄いので圧迫力は劣りますが、ズボンを履いても違和感がなく、かつ膝の曲げ伸ばしも制限されない特徴があります。

そして、このタイプはよく保温効果があると考えられていますが、それよりも効果としてはやはり圧迫することで筋だけでなく膝関節周りの組織が刺激され、運動時の機能が高まることが挙げられます。

もちろん、ひざが寒いということでお困りであれば、セラミックや遠赤外線などを含むサポーターは有効かもしれませんが、ひざが痛いという場合であれば、保温効果よりも適度な圧迫感による動きやすさの効果の方が高いと言えます。
 
ある報告では、体温を逃がさない殊樹脂製サポーターと綿製サポーターとの間で、変形性膝関節症の臨床症状の改善度に有意差がなかったという報告もあります。

そして、セラミックや遠赤外線など含むサポーターが、変形性膝関節症に有効であったとの医学論文を見つけられることができませんでした。

そして、一般的な巻くタイプと履くタイプとで私は、膝の可動範囲を比較してみました。

対象は右膝で男性5名、女性6名の11名で、平均年齢としては47歳です。

結果だけ言うと、巻くタイプは膝を曲げる角度が制限され、履くタイプは履かない状態と大きな差が統計学的に認められませんでした。

さらに何も履かない状態と履いた状態で筋力を数値化したのですが、スピードが優位に高まった結果となりました。

これは日常生活に必要な動作をサポートし、動きを楽にできる可能性があると私は考えています。

以上を踏まえメリットは
・ズボンを履いても違和感がない
・動きやすさを感じ、かつ膝の動きをあまり制限しない
という点です。

そして、デメリットは
・巻くタイプよりも圧迫力は劣る
と言えます。

もっと安定性がほしいという方
3つのタイプのメリットとデメリットが理解できたところで、ちょっと余談です。

よく、膝の横に支柱が入っていたり、ベルトでクロスをするようなものを見たことありませんか?

これはスポーツで活用するために作られたものと、日常生活で硬性装具のようにしっかりと固定するために作られたものの2種類が存在します。

いずれももっと膝をもっと安定させるメリットがあります。

ただし、スポーツではなく日常生活で使用する場合のデメリットは、デザインが病人らしいとか、膝が明らかに悪いと分かるため目立つ、蒸し暑い、装着すると安定するがかえって痛みが増すといったことが挙げられます。

このため購入の際はそれこそ慎重に、そして専門家のアドバイスを貰うほうが良いでしょう。
 
というわけで、皆さんがまずサポーターで考えるべきことは、巻くタイプか履くタイプ化を選ぶということです。

サポーターの選び方
サポーターを検討されている方の多くが、病院へ行くほどじゃないけど、膝が痛いという方だと思います。

そして、膝の負担を減らすポイントは「圧迫」だと言うことが、これまでの内容からご理解いただけたと思います。
 
さらに、巻くタイプは圧迫を強くできる半面、曲げが制限されやすい特徴があり、履くタイプは圧迫は調整できないが、曲げは制限されにくい特徴があります。
 
普段から庭作業やしゃがみ込み動作を行う機会が多い場合は、まずは巻くタイプを選択すると良いと思います。

そして、巻くタイプでも不安定に感じていた歩行が安定した、という声はたくさんあります。

また、今では100円ショップでもサポーターが手に入るので、そこで試しても良いと思っています。

私はよく下記の動画のように、膝を伸ばした時の力の入りやすさや重さなどを感じてもらったら、両手で軽く圧迫すると楽になるのであれば「履くタイプ」をオススメしています。

一方、両手で前のふとももと少し強めに圧迫して、この方が明らかに楽に挙げられるのであれば「巻くタイプ」をオススメしています。

大切なのは巻くタイプも履くタイプも、装着して「動きが楽になる」のを実感しながら運動して、膝の機能を高めることです。
 
そして、外しても大丈夫になるようにしていくことです。
 
是非、今回の内容を参考にサポーターを選んでみて下さい。