今回は寝違えの痛みとそのケアについて解説します。
大切なのは、強い刺激を与えないことです。
つまり、「もまない!」ということ。
そして、結論から言うと「保護して動かす」と良いです。
気になる方はぜひ、最後まで御覧ください。
まず、寝違えとは、目が覚めて起き始める際に、首の後ろや首から肩、時には腕に痛みが出る症状を言います。
長時間同じ姿勢をとった直後に痛みがでるのが特徴で、首を動かすと痛みが出る時もあれば、痛みで首を動かせないこともあります。
つまり、首の運動制限と痛みです。
首なので、もしかしたらヤバいかも…と心配になりますが、多くは数時間から数日をかけて徐々に痛みが改善し、首の動きも回復してきます。
寝違えの原因については様々な意見や報告がされており、本当の意味で原因を特定するのは難しいとされています。
その理由は、検査や画像で捉えられるような変化がないことが多いからです。
ただ、超音波エコーが普及してきたこともあって、原因が大きく3つに考えられるようになってきました
3つの原因のうち、1つが問題で痛みが出ていることもあれば、3つが問題で痛みが出ていることもありますが、主体となる原因が分かると対策も明確になりますので、まずはそれぞれの原因について解説します。
まず原因の1つめと言われているのが、椎間関節という首の関節です。
この周辺の組織が動き始めに負担がかかって、痛みを自覚している場合が1つ。
この場合、関節周辺の痛みを自覚することが多いので、ピンポイントの痛みであることが多いように感じています。
2つ目は、首周りの筋肉や筋膜に負担がかかって痛みを自覚している場合です。
寝ている時の不自然な姿勢によって、一部の筋肉の血流が悪くなったり、前日に激しい運動や重労働をして筋肉がこむら返りのように緊張してなったり、長時間のデスクワークなどによる動かさなすぎることで血流が悪くなって、負担がかかる場合などが考えられています。
関節の痛みと違ってピンポイントではなく、痛みが首周りに存在していることが多いように感じています
3つ目は、首の関節から出てくる神経に負担がかかって痛みを自覚している場合です。
動き始めの不意なストレスで神経に負担がかかることで、痛みが誘発されると考えられていますが、この場合首だけでなく神経が走行している肩周り、酷いときには腕などの広範囲に症状が誘発されることがあります。
神経と聞くと、ちょと心配になるかもしれませんが、いずれも大きな外力が加わったことによる怪我ではないため、一般的には時間が経てば徐々に痛みが改善し、首の動きも回復してきます。
対策
一般的には、動かすと首が痛いので、痛い方向には動かさずに経過をみます。
そして場合によっては、病院で湿布をもらったり、鎮痛消炎薬や筋弛緩薬の内服、漢方が有効とされています。
そして、可能なら緩やかにストレッチするのも有効とされていますが、痛みを我慢してストレッチするのは逆効果の場合があると言われています。
つまり、強い刺激でのストレッチやマッサージは危ないと思って下さい。
私が新人の頃、寝違えの方に対して、痛みのない範囲でマッサージをしたことがありますが、その時は良くても、帰ったら痛みが増大したという経験があります。
今は、そんなことしませんが、その頃は痛い場所をほぐすことが対策だと考えていました。
結論から言うと、3つの原因に対して行うケアは「もまない」ということ。
むしろ、痛みの部位の負担を減らすように、優しく浮きあげるようにして保護し、痛みのない範囲で首以外を動かして機能の回復を早めることが大切です。
このことについて早速、具体的に説明します。
まず、寝違えで多いのが首を動かした時に「ピンポイントで痛い」という方。
これは先程説明した椎間関節の問題が主体となっていると私は考えています。
椎間関節の周辺にはこのように関節を包む袋(関節包)や、椎間関節を支配している神経(脊髄神経後枝内側枝)が位置しています。
このためそこに負担が加わらないように手で保護した状態を作って、その上で体を動かして関節周りの血流を改善させたり、機能を高めたりすることが大切だと考えています。
椎間関節
ケアの方法はとてもシンプル。
痛みのある部位や押すと痛い部位を薬指で触れてください。
薬指で痛い部位を触れたら、人差し指と中指で皮膚を軽くずらすように持ち上げます。
決して強く押さずに、触れる程度の圧で持ち上げ、関節周りを柔らかくするように動かし、動かない位置までずらします。
ずらした手は動かさずに固定しすると、関節が保護されますので、その状態で痛みのない範囲で動かします。
この時のポイントは胸から動かすことです。
首の動きの土台となるのは胸なので、胸が動くと首にかかる関節の負担が減ります。
慣れたら膝から動かすと、全身の機能と血流が改善し、回復が比較的早まると思いますので、是非お試し下さい。
具体的な方法については最後に載せている動画をご覧ください。
また、場合によっては冷やすことが、効果的である場合もあります。
保冷剤などで冷やしたほうが痛みが緩和する場合、関節の表層にある皮膚や筋の血流は良くするためにも、皮膚を動かす程度の刺激は入れて良いですが、保護して胸を動かすのは控えて下さい。
この場合、どちらかと言うと安静にした方が良くなります。
筋・筋膜
さて、痛みがピンポイントではなく比較的首の広い範囲に存在する場合は、筋肉や筋膜のケアをして下さい。
ポイントは揉むのではなく、痛みのある箇所を挟み込むように浮きあげることです。
痛みのある部位を左右から軽く挟んだら、横に横断するように優しく動かす。
(下記の動画で解説していますので、是非参考にして下さい)
これだけです。
問題がなければ動かしていきますが、これも胸から動かすことがポイントです。
痛みのない範囲で動かし血流を改善させて下さい。
また、椎間関節と同様、保冷剤などで冷やして明らかに楽になる場合は、動かすよりも安静が良いでしょう。
繰り返しになりますが、寝違えは一般的に数時間から数日をかけて徐々に痛みが改善し、首の動きも回復します。
より楽になるケアを実践してみて下さい。
末梢神経
首の関節から出てくる神経に負担がかかって痛みを自覚している場合、首だけでなく肩や腕などの広範囲に症状が誘発されることがあります。
経験上ですが、この場合は揉むなどの刺激を与えるよりも、深呼吸などリラックスができる運動を行いながら負担のかかっている神経周辺の血流を改善させると良いです。
関節や筋肉のイメージは皆さんしやすいかと思いますが、神経となるとイメージは難しいと思います。
なのでまずは下図を御覧ください。
黄色いのが神経ですが、神経はこのように様々なところを走行しています。
脊髄神経前枝と書かれている神経は腕に、脊髄神経後枝と書かれている神経は首や背中に向かいます。
つまり、神経に負担がかかると首だけでなく肩や腕にも症状が走りやすいと思ってください。
それを踏まえて、寝違えで来院された方で神経の痛みが関与していた方をここで紹介させて下さい。
神経の痛みに対するイメージがし易いと思います。
この方は右の首の痛みで、首が痛くて回らず車の運転が怖いとのことでした。
思い当たるふしは、前日天井を向くような作業を長時間行っていたことでした。
なお、動かさなければ痛みはないとのことでした。
しかし、左右どちらの方向に動かしても痛みは首と肩に出現していました。
このように痛みが首以外にでるのが神経の痛みの特徴として挙げられます。
そして緑の丸部分を保護するようにして動かすと痛みが大幅に軽減しました。
つまり、神経に加わる負担を減らす際、神経の周りを走行してる骨や関節の動きをとめるように、左右から保護したうえで胸を動かすことがポイントになります。
余談ですが、頚椎の神経に負担がかかると、下図ように痛みが様々な部位に出るといった報告もあります。
※C3やC4とは頚椎の神経の番号を指しています。
もし首を動かすと、首以外も痛みが出る場合の寝違えであれば、左右から保護するように手で挟んで動かすと、痛みが緩和する部位があります。
ポイントは首の真ん中から指2〜3本外を左右からやさしく包むように軽く圧迫して、首周りの皮膚や筋が浮き上がるように保護して下さい。
その状態で痛みが最も緩和する場所を捉えたら、手を離さずにやさしく胸から動かすと良いです。
実施後、可動範囲が少し増えたり痛みが緩和していれば、ケアを30秒〜長くて60秒くらいを1セットとし、思い出したら行うようにすると良いです。
反対に痛みが強くなる場合は、何もせずに様子を見たり、やはりアイシングが効果的なこともありますので、そちらも試してみて下さい。
そして心配であれば、信頼できる専門家のところへ相談してください。
寝違えの痛みとそのケアについて解説しましたが、大切なのは「もまない」ことです。
寝違えは首の運動制限と痛みであり、多くは時間とともに回復します。
その回復を早めるために痛みが、関節が主体なのか、筋・筋膜が主体なのか、神経が主体なのか、それぞれの判別方法や
ケアのポイントをご紹介しました。
いずれも負担を減らすために、優しく浮きあげて保護しながら痛みのない範囲で動かして、周りの血流を改善させ回復を早めることが大切です。
そして、動かす時のポイントは、首の動きの土台となる胸から動かすことです。
また、場合によっては冷やすことが効果的であるため、保冷剤などで冷やしてみても良いと思います。
大切なのは、痛みがその場で緩和する方法を選択することです。
是非、寝違えたら下記の動画を見ながらケアを行って下さい。