成長痛の1つ「オスグッド」について解説します。
もし、子どもに膝が痛いと相談されたら、今回の内容を参考にケアをしてみてください。
大切なのは早めの対策です。
どういった状態なのかを知って、正しいケアで悪化を防ぎましょう。
スポーツ動作のジャンプや着地、ストップ、ダッシュの繰り返しで膝に負担が加わり続けると、お皿周りが痛くなることがあります。
これは体の筋肉で最も大きい「大腿四頭筋」を酷使することで、筋肉と繋がっている膝のお皿や、その下のスネの骨につく膝蓋腱という非常に硬い組織に負担がかかって起こります。
この症状は一般的に「ジャンパー膝」と言われ、お皿の直下が痛くなることが多いです。
また、お皿の上や膝蓋腱が痛くなることもありますがいずれも過剰に使いすぎた結果と言えます。
さて、このジャンパー膝ですが、骨の成長がまだ未熟な子どもの場合で起こるとオスグッドと呼ばれ、痛みの部位がスネにでるのが特徴です。
これは、まだ伸長が伸びる成長期の子ども(だいたい10歳〜15歳くらいの子ども)がなり、骨が成熟しきれていないために、スネの骨にダイレクトに負担がかかって痛みがでます。
このスネの骨は「脛骨粗面」と呼ばれ、オスグッドではこの部分の圧痛と骨が飛び出るように隆起するのが特徴です
経過としては脛骨粗面の骨化といって、骨が成熟すれば症状は収まります。
ただし、遊離骨片といって骨の一部がかけたりする場合は、3~6カ月も運動を休止せざるを得ないことがあると報告されています。
つまり、症状が軽いうちに予防することが大切です。
初期症状としては、運動中に違和感や痛みがでますが、パフォーマンスレベルを自分で変えたり、軽く休んだりすると何とかなったりするので、「動きすぎて単純に負担がかかっただけ」だから休めば良くなる、と思うことが多いです。
ただ、だんだん運動時の痛みが強まったり、パフォーマンスに支障を来して受診すると、オスグッドと診断されることがあります。
つまり、違和感や痛みが軽いうちに対策が必要と言えます。
もし痛みが強くなってしまうと、炎症を伴う場合があり、そうなるとスポーツの一時的中止や、運動量を制限したり、場合によっては安静が指導されます。
そしてオスグッドの一般的なアプローチとしては、大腿四頭筋の柔軟性回復として「ストレッチング」などの運動や、適宜アイシングなどを行います。
そして、経過を見て徐々に今度はパフォーマンスに耐えられるよう、大腿四頭筋などを鍛えていくのが一般的です。
ただし、最終的にはやはり「負担をかけている体の使い方」を変えることも必要になったりします。
じゃあ、もし普段の会話で膝に違和感があるとか、病院に行くほどではないけど痛みがあると分かったら、どうすれば良いのでしょうか。
まずは、大腿四頭筋の負担なので「大腿四頭筋のストレッチ」となりますが、それだけは根本的な解決に繋がりにくいです。
先述しましたが、膝に負担が加わり続けると、お皿周りが痛くなるのがオスグッドです。
つまり、「負担のかけすぎ」を見直すことが大切です。
私がオスグッドの子に対応するときは、次の3つの視点で対応するようにしています。
それは
1,痛みのコントロールに必要な運動量のコントロール
2,筋の柔軟性と動作に耐えうる筋トレ
3,体の使い方を見直し、負担のかかりにくい動作の獲得
です。
1つめの運動量のコントロールとは、簡単に言うと「練習量を自分でセーブできるか」ということです。
子どもの性格を考えるということでもあります。
例えば、練習量が明らかに多い子、頑張りすぎる子、無理をする子、痛みが比較的我慢できる子は、ちょっとセーブも必要だよと指導し
ます。下図を参考にし、子どもと一緒に話し合うと良いです。
2つめは大腿四頭筋の柔軟性だけでなく、パフォーマンスに耐えうる充分な筋力があるかをみます。
普段から行って欲しい大腿四頭筋の柔軟性を高めるケアは、ここで紹介するパフォーマンス向上にも繋がりますので、これは最後にお伝えします。
その前に、パフォーマンスに耐えうる充分な筋力があるかをチェックしましょう。
方法はとても簡単。
片脚スクワットでチェックします。
この考えは、医師の黄川昭雄(きかわあきお)先生が考案した「体重支持指数」という考えを基にしています。
体重支持指数とは、WBI;Weight Bearing Indexといって、年齢、性別、人種を問わず体力を「客観的に、普遍性を持って評価」するための指標です。
そして、スポーツ活動をするのであれば、WBIが130以上必要とされています。
WBIが130とは座った状態で、脚の伸展筋力が体重の1.3倍ということです。
(バイオでックスという特殊な機械で測定します)
これ、どのくらいかと言いますと、0cmの高さから片脚で立つレベルです。
あくまで指標ですが、片足でしゃがんで立つという筋力がない(WBIが130以上ない)場合、子どもの場合であれば、柔軟性も低下していることが多いのです。
この場合は最後に紹介している、大腿四頭筋の柔軟性を高めるケアを行いながら、WBI130を獲得できるように目指していくと良いでしょう。
3つめの体の使い方を見直し、負担のかかりにくい動作を獲得することです。
これは専門家のアドバイスがある方が良いと思います。
クセは自分では気づかず、思い込みで直すのも良くないです。
このため、信頼できる体の先生に色々相談してみると良いです。
ちなみに当院ではインソールを駆使して、パフォーマンスの向上も図っています。
無意識に負担のかかりにくい動きを誘導できれば、体の使い方も変えやすいものです。
興味があれば是非ご相談ください。
ジャンパー膝にかぎらず、「負担のかけすぎ」を見直すことで負担を減らし、痛みを改善させることが大切です。
そのために大切な3つの視点についてお伝えしました。
そして、定期的に大腿四頭筋の柔軟性を高めておくことは、パフォーマンスの向上に繋がります。
若い子の場合、これを実施しただけでも筋出力がその場で高まります。
この状態で筋トレなどを行い、WBI130以上の指標となる片脚スクワットができる状態にもっていくと良いと考えています。
という訳で、最後に大腿四頭筋の柔軟性チェックです。
これ下図の姿勢でストレッチを行うと良いです。
でもその前に、ある運動をするとより効果的なストレッチが可能です。
これは動画で解説している映像がありますので、そちらを参考にして下さい。
子どもに膝が痛いと相談されたら、まずこうした視点でケアを実践してみて下さい。
そして、このケアをしても痛みが変わらない場合は、別の問題ということも分かるのでその場合は、お近くの専門家の先生に相談してみてください。
お皿の下の脂肪帯を含めた別の問題や、体の使い方の問題が影響しているかもしれません。
是非、痛みのない健やかな体で運動を楽しんで下さい。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。